偶然の出会いは本当でいつもすぐ近くにあるのかもしれない

僕は新卒で入社した会社を短期離職した過去がある。同期で初めての退職者だったから、当時は恥ずかしい・情けないという気持ちが強く、ほとんどの連絡先を残すことがないまま、逃げるように会社を去った。

それから何年も月日は流れ、僕はとある街へと引っ越した。そこは、新卒の研修でお世話になっていたIさんが暮らす街で、僕はそれを覚えていたから、偶然でもいいからいつか会えたらと思っていた。

でも、現実には何万人も住んでいるから、簡単に見つかるわけがない。「まぁそんなものだよね」と思いながら、いつもと変わらない日々を過ごしていた。

転機になったのは、ある日の仕事を終えた帰り道。その日は残業をしたために、いつもよりも帰りが遅かった。
乗り換えの駅でエスカレーターを上った先に、一瞬だけれどIさんと思しき人の姿が見えた。

背丈や顔の感じも似ているけれど、あれから何年も経っているし、人違いだったら迷惑だから声をかけることができなかった。このときも「まぁIさんなわけないよな」と自分を納得させて帰り道を急いだ。

自宅への最寄り駅に着いたとき、もしかしたらさっきのIさんに似た人が来るかもと思い、同じ電車に乗っていた人たちが改札から出ていく様子を近くで眺めていた。

すると、乗り換えの駅で見かけたあの人が、こちらに向かってくるではないか。

思わず自分が一歩踏み出すと、その方と目が合い、僕を見るなり「おぉーっ!?」と声を上げた。「Iさんですか?」と声をかけると「びっくりしたぞ。元気にしてたか?」と答えてくれて、久しぶりすぎる再会を互いに喜んだ。

住んでいる場所の話をしているとご近所さんということがわかり、途中まで一緒に歩く。

僕は今までのことやこの街に引っ越してきたことを話し、Iさんは僕が辞めた後に会社で何があったのか、今は何をしているのかを話してくれた。

そして、近々飲みに行く約束をして別れた。

すぐに声をかけられたわけではないけれど、こうして偶然再会できたのが本当に嬉しく、こんなことがあるんだと思うと気持ちが高まり、その夜はなかなか寝つけなかった。

ただの口約束で終わらせるのではなく、自分から連絡してIさんを誘おうと思っている。

自分が知っている過去の人は、もしかすると案外すぐ近くにいるのかも。そして、目の前に突然現れたり、偶然にすれ違ったりしているのかもしれない。

喫茶七色|akira

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