一人よりも二人で一皿の寿司を

回転寿司といえば小さな頃からいろんな記憶がある。

誕生日祝いや休日のふとした時に、家族全員で近くの回転寿司屋に向かい、好きなお寿司を家族で楽しむ時間があったことを今でも覚えている。

いつからだろう?そんな家族と行くような場所だった回転寿司に一人で行くようになったのは。

思い返すとそれは大学に進学して一人暮らしをするようになってからだ。当時暮らしていたアパートから歩いてすぐの場所に100円の回転寿司チェーン店があった。

当時は本当に安く、一皿は大抵が税込108円、かけうどんも130円くらいで1000円もかからずともお腹いっぱいになることができた。

一人暮らしでできる料理なんか限られているし、安くお腹を満たせるというのもあり、その回転寿司チェーン店には本当にお世話になっていたのだ。

就職して上京してからも、気が向いたときはそのような安い回転寿司を求めては、小腹を満たしたり給料日のご褒美?のような使い方をさせてもらっていた。

一人だとほとんどの場合でカウンターに通される。そんなある日、カウンターで一人寿司を食べているとき、本当に何気なくこんなことを思った。

「あれ?なんか流れ作業みたいに食べてるのは何でだろ?」と。

最近の100円系の回転寿司は、その多くがタッチパネルでオーダーし、レーンを使って流れてくる。レーンといっても、他のお寿司は並んでいなくて、注文をした分だけが各席に送られてくる仕組みだ。

そこに誰も見えない無機質さ、レーンを送られてきた寿司を早く取らないとアラームが鳴り、急いで取っては口に放り込むという行為が、どこか単純で何のために寿司を食べているのかわからなくなってきたのだ。

いや、そもそも、そこに意味を持たせる必要はないのかもしれない。当然一人で回転寿司に行くのが好きな方もいるわけだから、僕の考えは大変失礼なものになってしまう。けれど、どうしても、僕はそこを自己解決できなくなってしまった。

話は変わるが、僕の彼女はお寿司が大好きな人だ。僕の実家がある富山に一緒に行ったとき、一番喜んでいたのは回転寿司のクオリティーの高さに値段の安さ。その日の朝に水揚げされた新鮮な魚を使ったお寿司が、アッと驚くような値段で流れてくるのだ。

お店の方がどう思うかわからないが、僕と彼女は二人で一皿のお寿司を食べる。半分ずつ食べれば、二倍の種類のお寿司を味わうことができるからだ。

そして、タッチパネルでお寿司を一緒に選び、手が空いているほうがレーンを流れてきた寿司を取り、会話をしながら寿司を味わう。

一人で食べる回転寿司にない要素が二人ならたくさんある。
そこに気づいたとき、僕は一人ではなく二人だから回転寿司に行きたいんだと思うようになった。

一人のご飯は平気だし、それはそれで気楽だけれど、回転寿司だけは一人ではもう行けないのかもしれない。
一緒に回転寿司を楽しむ彼女がいるのだから。

別々な寿司を食べるのも楽しいけれど、次はどれを食べる?と二人でタッチパネルを見ながら、もしくはメニューを見て相談しながら、一皿の寿司を二人で分け合って食べるのが今の僕にとって大切な時間なんだ。

喫茶七色|akira

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