喫茶七色の始まりを支えた老舗陶器店が歴史に幕を下ろす日

松屋陶器を正面から撮った外観写真

喫茶七色といえばクリームソーダ・デュオ。

ペアソーダ用のグラスを使った2色のクリームソーダというイメージの方も多いはず。

そのきっかけを与えてくださったのは、千葉にある「松屋陶器」という陶器店でした。

今回は当時の想い出を交えながら、閉店が目前に迫る老舗陶器店に足を運んだ時のことを書いていきます。

松屋陶器とは

松屋陶器さんの創業は大正7年(1918年)。100年以上の歴史を持つ老舗の陶器店です。

「昭和レトロと現代の融合」をコンセプトに掲げており、実店舗以外にInstagramやBASEでも商品の魅力を届けています。

松屋陶器を横から撮った外観写真
初代の写真
初代と当時の松屋陶器の写真

現在は先代の3代目と4代目で店を営んでおり、街の陶器店は失われつつあるなか、歴史を受け継いできた貴重なお店です。

喫茶七色と松屋陶器の出会い

ジュリアンのペアソーダをパートナーが見つけ、「このグラスでクリームソーダが飲みたい」という声で、僕はグラスを探し始めました。

リサイクルショップやアンティークショップに行き、メルカリやヤフオクとにらめっこする日々。

でも、あのグラスは、どうしても見つかりません。

Googleマップで松屋陶器を見つける

陶器店にもグラスがあることがわかり、Googleマップで調べ、近くなら実際に行ってみることもありました。

それでも見つからず、「千葉県 陶器店」で調べたとき、たまたま表示されたのが松屋陶器さん。

ストリートビューで見ると、古そう(老舗感がある)・大きい(倉庫がありそう)のがわかり、僕は直感で「ここだ!」と思ったんです。

そして、電話をかけると3代目のお母さんが出てくれて、僕は「◯◯で作られていた、間に仕切りがあるパフェグラスを知りませんか?」と聞きました。

「調べてみますね」と言われて、その日は電話を切りました。

ついにたどり着いた?

次の日にスマホが鳴り、電話に出ると「出てきましたよ。サイズ違いでいくつかあります」と言われ、僕はもう嬉しくて仕方がありませんでした。

「取っておいてください。この週末に必ず行きますんで!」と伝えて小躍りしたものの、「もしかして違ってたらどうしよう」と思いながら、週末になるのを待って千葉に向かいました。

そこにあったのは……

お店に着くと、3代目・4代目夫妻が待っていました。

都内からそれも若い自分が、千葉までグラスを見に来たという物珍しさもあってか、ほぼ家族総出で出迎えてくださったのを覚えています。

そして、レジ台に置かれていたのは、夢にまで見たあのグラスでした。

藤沢のジュリアンで使われている小、浦安の喫茶さくらで使われている特大、熱海の純喫茶パインツリーで使われているサンデータイプがそれぞれ出てきたそうです。

レジ台に置かれたペアソーダグラスの写真
当時を再現。シールは今もそのままに
ペアソーダのグラスが棚に置かれているのを再現した写真
当時の雰囲気はこんな感じかな?(在庫はありません)

店内や倉庫も見させていただき、グラス・陶器・調理器具の数々がところ狭しと並ぶ様子は、僕にとって宝を探すような時間でした。

そしてクリームソーダ・デュオが生まれる

グラスをいただいて自宅に戻り、早速パートナーに作りました。

そして、紆余曲折を経て名付けたのが「クリームソーダ・デュオ」です。

ペアソーダの写真
このグラスで初めてクリームソーダを作った日

松屋陶器さんなしでは、喫茶七色としての発信や1日喫茶はできていなかったかもしれません。

僕にとって、それだけ大きなきっかけをくださった場所なんです。

久しぶりの松屋陶器さんへ

それからも何度か足を運んでいましたが、閉店の知らせを聞いてから初めて行ってきました。

松屋陶器というネオンの写真

閉店セールを聞きつけ、県内外から足を運ぶ方も多かったらしく、かなり売れているそうです。

松屋陶器の店内の写真
店内のグラスの写真

売れたといっても、在庫はまだまだたくさんあり、楽しい時間を過ごすことができました。

いわゆる昭和レトロなアイテムばかりで、ずっと見ていても飽きません。

そして、倉庫はもっとすごいです。

とにかく倉庫がすごい

普段は見えないお店の裏側も、閉店セール中は自由に見ていいとのことで、僕も久しぶりに倉庫を探検しました。

階段を上っていきましょう。

倉庫へと向かう階段の写真
3階の倉庫の写真

普段は見えないお店の裏側。それだけでドキドキ・ワクワクします。

3階

3階はグラスが並べられています。

今はなきメーカー、今もあるメーカー。本当にいろんな形とサイズのグラスが残っています。

倉庫のグラスの写真
今はなきメーカーの箱とグラスの写真

今回はクリームソーダ・デュオの小のグラスを持って行ったので、許可を得て「当時こうだったかも」という感じで撮ってみました。

倉庫のグラスの写真
倉庫に眠っていたグラスを再現した写真

倉庫に何十年と眠っていたそうです。

そこに電話をかけてきた僕。
そして見つけられたグラス。

こうしてみると、ちょっとグッとくるものがありました。

4階

4階にはコーヒーカップや酒器、灰皿などが並べられています。

4階倉庫の写真
酒器の写真
灰皿の写真
4階倉庫の棚の写真

現行品は現行品の、当時物は当時物ならではの良さがあると思っています。

でも、これまでの時間の積み重ねを感じるからか、僕はどうしても当時物に惹かれがちです。

割れた陶器やグラスたちの写真

そして、見ていただきたいのが、こちらの割れてしまった陶器やガラス。

東日本大震災のときから残されているそうです。

最上階の4階は特に揺れが激しく、棚から落ちて割れてしまったのだとか。

震災の痕跡も、今回の閉店を機に失われることになります。

倉庫の記録

倉庫は長い年月の歴史を感じずにはいられません。

どこを切り取っても絵になる。そんな雰囲気がここにはあります。

消防設備の写真
昇降機の写真
地下へと続く階段の写真
地下倉庫の写真
地下倉庫の湯呑みの写真

建物は閉店後に解体予定らしく、僕は夢中でシャッターを切りました。

今回のお買い物

僕も記念に買わせてもらいました。

いいなと思えるアイテムがまだまだありましたよ。

グラスを包む新聞の写真
今回買ったグラスの写真

今回は矢来柄のミキシンググラスと、木村硝子のツイストグラスをいただいてきました。

どちらも当時物。

重厚感のある佇まいがたまりません……

ずっと大切に使っていこうと思います。

最後に

2024年7月28日をもって閉店となりますので、気になる方はお早めに。

屋上から撮った松屋陶器の屋号の写真
松屋陶器の外観写真
閉店までを記したカレンダーの写真

松屋陶器さんの今の姿を見られるのもあと少し。

老舗だからこその空間や雰囲気を、ぜひ1人でも多くに味わってほしいです。

P.S. 感謝の気持ちを…

松屋陶器さんへ。

喫茶七色が始まる大きなきっかけを与えてくださり、本当にありがとうございました。

当時はInstagramやBASEを運営されてないなかで、いきなり東京から電話をかけてきて、実際にお店に現れた僕にビックリされたと思います。

でも、そのご縁が、今の喫茶七色としての活動につながっています。

一度歴史に幕を下ろすわけですが、同時に新たなプロジェクトが始まるとのことで、僕も非常に楽しみにしています。

長い間本当にお疲れさまでした。
皆さんとの想い出はずっと忘れません。

そして、これからもぜひよろしくお願いいたします。

喫茶七色|akira

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です