靴職人に会うという目的を早々に終え、初海外なのに暇になってしまった僕のサンフランシスコ旅行。
それでも、どうしても行ってみたい場所はいくつかあって、その1つが「トリエステ」というカフェだった。
ビート文学の発展を見届け、世界中の本好きが集まるシティライツブックストアや、サンフランシスコの高台にある有名なコイトタワーなどの近くにある。
調べてみると、トリエステの創業は1956年。西海岸にエスプレッソを初めて持ち込んだカフェであり、文豪も通う有名なカフェになったそうだ。
海外旅行は観光がメインなんだから、ケーブルカーに乗ったり、刑務所だったアルカトラズ島のツアーに参加したりでしょうと言われそうだが、そもそも観光目的で行っていないのだから仕方がない。
松浦弥太郎さんの何かの本にトリエステが紹介されていて、それを目にしていたから行ってみたくなった。
大通りから外れた場所にトリエステはある。
週末だからか、朝からたくさんのお客さんで賑わっていた。お店の中だけじゃなく、外に置いてあるポストの上にカップを置きながら、話を楽しんでいる人たちもいる。
お店のスタッフは白衣を来ていてテキパキと動いており、動きながらオーダーを取っているような感じだった。
僕はカフェラテを注文する。席はどこもいっぱいで、みんな相席をしているようだった。僕も空いている席を見つけて、反対側に座る老人に声をかけ、「OK」とのことで座らせてもらう。
スタッフに呼ばれたので、カフェラテをカウンターに取りに行く。そして、席に戻って味わう。
やっと落ち着いて、店内を見渡すことができる。
家族や恋人同士で話をする人、新聞や本を読む人、ヘッドホンで音楽を聴く人、置かれたジュークボックスで曲を選んでいる人、常連さん同士が楽しく笑い合っている姿。
好きな飲み物を片手に、みんな思い思いの時間を過ごしている。
自由だけどマナーは守っているので、ガヤガヤしているのに心地よい。
通りに目を向けると、2人で話し合っていたグループに、多分ご近所の常連さんがもう1人やってきた。
2人はあたたかく迎え入れて、3人で笑い合っている。
いま来た常連さんがお店の中に入ってきて注文をして、飲み物を受け取り、彼らのもとへ戻っていく。
カップを片手に常連同士の楽しいいつもの時間。
国は違えど、どこも人同士の関わりで日々が成り立っているんだなと実感した。
カフェラテを飲み終えたので、お店を出る。
「いつかこんな場所を作れたらいいなぁ」とぼんやり考えてみる。きっと実現は難しいんだろうけど、トリエステという空間は、自分の頭の中で空想するお店の理想像の1つになっている。
喫茶七色|akira