僕にとってコロナ禍とは、「否応なしに自分と向き合う時間が流れていた時期」だと思っています。
そのときに生まれたアーティストの作品は、どれもが自分の中に深く入ってくるような不思議な感覚を覚えます。
上柿絵梨子(Eriko Uegaki)さんの『Rêverie 日曜日の夢の始まり』というアルバムもそのひとつ。
今日は自分に気づきをもたらせてくれたステキな作品について紹介させてください。
目次
作品のこと
上柿さんの『Rêverie 日曜日の夢の始まり』は、2020年12月25日にリリースされた3枚目となるアルバム。日付だけを見ると、クリスマスの贈り物のような気持ちにもなりますね。
この作品は2020年3月より、毎週日曜日に上柿さんの即興演奏がYoutubeにアップされ、全10回の音源をマスタリングした後、アルバムとしてリリースされました。
Rêverie op.1~op.10までの10曲に加え、表参道に店を構える「はいいろオオカミ+花屋西別府商店」の鏡の作品にインスピレーションを受けた新曲「Mirror」を加えた全11曲。
限定300枚とあり、リリースから日を経て探し始めた僕は見つけるのに苦労しましたが、やっとの思いで1枚を見つけ出し、手元に迎え入れることができました。
アルバムはCD+ブックレットになっています。この質感と飾らない美しさを持つ装いは、デジタル全盛期の今において本当に貴重な作りです。
「物」としてここに存在しているからこそ、手触りや視覚的な感動を得られます。
デザインはブックデザイナー 山元伸子氏、装丁は製本家 都筑晶絵氏、写真は表萌々花氏がそれぞれ担当。
ブックレットを開けば、上柿さんのメッセージやドローイングが散りばめられており、写真も言葉にならない静謐な美しさを秘めています。
2020年といえば、目には見えないコロナが猛威をふるい、繰り返しの緊急事態宣言でこれまでの日常が大きく変わってしまうなど、誰もが先の見えない不安の中で毎日を生きていたと思います。
そのような状況下で紡がれてきた曲たちの紹介は、やはり1曲目の「Rêverie op.1」から。
繊細ながらも音の余韻は長く、ペダルを踏み込むときの「ゴトッ」という音も、作品を引き立てている気がします…耳をすませば息づかいまで聞こえてくるかのような感覚に。
3曲目の「Rêverie op.3」。
はじめは音数も少なく控えめな入りながら、後半にかけて流れるように紡がれていく旋律が美しいです。
6曲目の「Rêverie op.6」。
曲から感じられるのは日常の喜び。毎日をあたたかく讃えてくれているかのような。
そしてラスト11曲目の「Mirror」。
コロナ禍に生まれた作品、タイトルのMirrorは「鏡」という意味。
自分自身を映し出してどうありたいかについて、思考を巡らせられるような気持ちになります。
全11曲73分。
「静かな夜を穏やかにやさしく過ごせるように」と祈られたコンセプトですが、シチュエーションを問わず1日を通していつ聴いても落ち着ける作品です。
僕個人としては、日が暮れ始めた頃から聴き始めるのがオススメですね。
作品(CD)の詳細情報
2020年リリースかつ限定300枚であるため、現在はほとんど流通していないかもしれません。
でも、もしかしたらどこかにまだあるかも……
本当に一度お手に取っていただきたい作品です。
デジタルやサブスクがあるなかで、なぜCDとして購入するのか?
その気持ちが伝わる美しい作品だと僕は思います。
作品の詳細は、上柿さんの公式ページ(下記)をご覧ください。