おばあちゃんのいる喫茶店が僕の居場所だった

県外の大学に入学し、一人暮らしを始めた僕が最初にしたことは、学校の外に自分の居場所を作ることだった。

当時から珈琲が好きだし、せっかくの愛知県なら喫茶店だろうとアパートの近くを探し始め、通える場所が2軒ほどできた。

そのうち1軒は自宅の1階を改装し、娘さんとお母さんの2人で営む喫茶店だった。

初めて行った日のことは今も忘れない。

やっぱりどう見たって、当時まだ18歳の自分が1人でお店に来て、カウンターに座るものだから、お店側からしたら気になって仕方ないだろう。

「どこから来たの?」「どこの大学に通っているの?」といろんなことを聞かれたけれど、2人の雰囲気や話し方がやさしくて、僕はここに通おうと決めた。

もちろん、1杯ずつ丁寧に淹れてくれる、ハンドドリップの珈琲もおいしくて。

平日は学校終わりに、週末はモーニングを食べにと、嬉しいことや悲しいことがあれば2人に聞いてもらいたくて、僕の足は自然と喫茶店に向かっていた。

お店のお母さんといっても、年齢は僕の祖母と同世代なので、勝手ながら離れた場所におばあちゃんがいるような安心感も、僕が通う理由だったのかもしれない。

初めての一人暮らしは、僕を速攻でホームシックにさせていたから、いつも迎え入れてくれる温かさがなおさら嬉しかった。

そんなおばあちゃん(お母さん)は、「あんたならきっとできる」と僕にいつも言ってくれていた。

例えば、アルバイトの面接に落ちたとき、就活に悩んでいるとき、新たなことに挑戦しようとしているとき、良い悪いにかかわらず、おばあちゃんはいつも僕を励ましてくれた。

お店にはずっと通いたいと思っていたけれど、事情があって僕が大学2年の終わりになる頃に閉めることになった。

閉めた後も、僕は2人に定期的に会いに行ったし、大学を卒業し東京に移り住んだ今も、その関係は続いている。

実は近々また会いに行く予定がある。

単純な旅行もいいけれど、会いたい人がいるから行く旅行は、僕にとって毎回特別な時間だ。

当時の想い出と今の自分をお土産に、僕は大切な人に会いに行く。

喫茶七色|akira

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です