ある日、会社の自動販売機で飲み物を買っていると、僕が手にしたココアを見たある女性社員の方が、「●●さん、ココアですか?いいですよねココア!幸せを運んでくれる飲み物ですよね~」と話かけてきたことがありました。
何も考えずにココアを選んでいたので、思わず「え?ココアが幸せな飲み物ってどういうことですか?」と聞いてみました。
すると、「ココアってイライラした時とか、落ち着きたいなーと思った時に飲むと、なぜかホッとするんですよね。で、そのホッとできる時間って何にも邪魔されないというか、すごく幸せだなと思えたんです。」と言いました。
僕がココアに対してそこまで考えてなく、目からウロコな言葉に「言われればたしかにそうですね!」と思わず感心してしまいました。
食べ物と飲み物を一緒にするのは少し違うかもしれないけれど、ココアを一口しただけでも一息つける心地よさを感じます。でも、チョコレートをかじっても、ココアほど落ち着くような経験は僕にはほとんどありません。
人って無意識のうちに飲み物を選ぶことも多いですが、それと同じ以上に意識して飲み物を選ぶ瞬間も多くあると思うんです。
例えば、コーヒーなら眠気覚ましとか目覚めの1杯とか、お茶や紅茶ならおやつと一緒に楽しむとか。
そこで考えてみると、「この方はココアに幸せを見出して飲んでるんだ」と思い、その気持ちがとてもステキだなと思えたんです。
それからというものの、僕はココアを飲むたびに自分の今の心身の状態をチェックするようになりました。僕にとってココアを選ぶことは、今の自分をメンテナンスするバロメーターのような位置づけなのかもしれません。
温かいココアは秋冬、春夏は冷たいココアが自動販売機に並びます。でも、冷たいココアでは、そこまでホッとするような落ち着きを得られませんでした。それはきっと、温度や香りの出方、口当たりも関係しているのかもしれません。
冒頭のできごとから1年が経ち、また会社の自動販売機に温かいココアが並び始める季節がやってきました。
自動販売機にお金を入れて、飲み物を選べる赤いランプが着いた時、「ココアは幸せを運んでくれるんですよ」という声が言葉が、頭の片隅に蘇ってきます。
そうすると、ついついココアを押してしまいます。
「どんな幸せがやってくるのかな?」
そんな想いを込めながら、缶を開けてココアを一口、また一口と飲んでいくのでした。
喫茶七色|akira