夏が本格的になる前、スーパーや八百屋にスイカが並んでいる様子を目にすると、ついつい頬が緩んでしまう。
ビーチボールのスイカでさえも、「あぁ……おいしそうだなぁ~」と思ってしまうほど、無類のスイカ好きであるワタクシ。
1人で楽しむ分なら、1/8カットや一口大のカットスイカで十分かもしれないが、なんだか少し物足りない。
両手で抱えて持たなければならないスイカのほうが、やっぱり夏らしい。
僕のささやかな夢の1つに、「大きなスイカを一人で買って食べること」があった。
時はさかのぼり、知らない土地で大学生になった19の頃。
大学の入学を機に一人暮らしを始めた僕にとって初めての夏、かねてから夢だった大きなスイカを買うことに決めた。
意気揚々とスーパーに足をズンズンと運び、スイカが並べられている青果コーナーへ。
小玉スイカやカットスイカには目もくれず、真っ先に手を伸ばして一番大きなスイカを手にした。
ずっしりと重いそれを両手で抱えてレジを終えて、家に持って帰る。大きなスイカといえば、透明やピンク色のビニールでスイカを覆い、手にぶら下げて持っていくと思っていたが、そうでない時も増えているらしく、少し物寂しい感じがする。
スイカを冷蔵庫で冷やしながら、「どうやって食べようかな」と考える。
何だか一人よりは誰かいてほしいなと思い、入学すぐに仲良くなった共通の友人たち何人かに連絡してみる。すぐに既読になり、「行く!行く!」とこれからすっ飛んでくるようだ。
友人が集まってきたので、ウェディングケーキのごとくスイカに入刀してみんなと夏を味わった。
三角に切ったスイカは頂点の部分が一番甘く、皮に近い部分までみずみずしい。
満足した友人たちが帰り、残り翌日に一人で食べた。
一人で食べるのもいいけれど、やっぱり誰かと食べるスイカが一番おいしいと思う。
スイカという同じ食べ物をみんなで分け合い、一緒に楽しい時間を過ごせるという幸せに満ちあふれている夏があったことを思い出しながら、今年は誰とスイカを食べようかなと今から楽しみにしている。