僕は教会が好きです。
といっても、必ずしもキリスト教を信仰しているというわけではありません。
実家は一応仏教だけれど、正月は神社に参拝に行くし、クリスマスはケーキを食べたりする、いわゆる日本人特有の宗教観で過ごしています。
じゃあなぜ教会が好きか?建築物として美しいとか雰囲気が好きというのもあるけれど、そこには2つの想い出があるからです。今日はこのことについて話していきたいと思います。
教会が好きな理由
僕が教会を好きな理由は2つ。
まず、建築物として美しいということです。
外観の形や装飾もですが、内観が素晴らしい教会も数多く存在します。
「日本 美しい教会」などで調べてみれば、全国の美しい教会を知ることができるでしょう。
次に独特の空気感を持っている、というより、そういう雰囲気を醸し出し、感じ取れる場所というイメージが教会にはあります。
厳かだけど、決して誰かを排除するような雰囲気はなく、すべてを包み込むかのような。
なぜかそういう感覚を覚えるのが「教会」という場所な気がします。
教会にまつわる2つの想い出
僕が教会を好きになった2つの想い出について。
不思議と導かれるような、当時はそんな感覚がありました。
サンフランシスコの旅でのこと
学生時代に卒業旅行として、1人でサンフランシスコに向かったことがありました。
5泊7日のスケジュールなのに、決めていた目的に必要だったのは1泊分ですから、初めての海外ながら早々に暇になるという不思議な状態に。観光地も調べておらず、当時はネットリテラシーも低かったせいか、simやポケットWi-Fiを借りて海外に行くということもしていませんでした。
ただ、日本で事前に調べていた場所だけは行ってみたいということで、それが「バークレー」という街でした。サンフランシスコの中心部からは地下鉄のバートで20~30分ほど。地上に出たり地下に潜ったりしながら、ゴトゴト揺られて到着。
旅の残りをバークレーで過ごすと決めてから、ピーツコーヒーというお店に毎朝足を運んでいると、ある女性と仲良くなりました。
彼女の名前はアネットさん。学校で英語を教えている教師だそうで、彼女はバークレーのこと、僕は今回の旅の目的や日本のことなどを話しながら、朝の楽しいコーヒーの時間を過ごしていました。
するとアネットさんは「バークレーを案内してあげるわ」というので、彼女の家がある場所や近くを一緒に散歩していたところ、「ここが私にとって特別な場所よ」と紹介されたのが、いつも行っているという教会でした。
教会は周りのお家とほとんど変わらない見た目で、屋根の頭頂部に十字架があるから、「あ、教会なんだ」と気づくくらい素朴な造りの建物です。
中に入ると太陽の光が明るく差し込み、光の反射で窓のステンドグラスがキラキラと輝く様子は美しさがあり、初めて教会に足を運んだ僕は感動のあまり、声を出すことさえできませんでした。
「嬉しい時も悲しいときも、私はここに来てお祈りをするの」とアネットさんは言って、いつものようにお祈りを捧げています。そのあとは「街を案内するわ」の言葉に甘えて、彼女の車でバークレーをグルっと一周しました。
バークレーの地形って、日本でいう函館のような感じです。山から海に向かって一直線に道路が伸びていて、少し坂を上がるだけでも遠くに海を眺めることができるステキな街。
あのとき、あの出会いがなければ、教会に縁遠いままだったんだろうなと、そういう大切な過去の想い出です。
haruka nakamuraさんのライブの話
haruka nakamuraさんの音楽が好きで日常的に聴いていますが、複数のアーティストと一緒になったpiano ensembleを結成し、各地を巡られていた時期がありました。
そのファイナルとして選ばれた場所が、文京区関口にある「東京カテドラル聖マリア大聖堂」。建築家 丹下健三氏の設計により再建された教会です。
教会内部は打ちっぱなしのコンクリート壁、地上は広く天井は狭い、三角形のような印象があります。天井付近は天窓になっており、反射した光は無機質なコンクリートの色を引き立てる幻想的な美しさを感じる空間です。
piano ensembleのメンバー間の阿吽の呼吸、明確な楽譜がなく、毎回一夜限りの即興に近い演奏は、演者と観客が一体となりまさにライブという名にふさわしい空間ができあがります。
さらに聖歌隊による歌が教会内部を包み込み、その神々しさはここが現実なのかどうなのか、一瞬区別がつかなくなるほどの空気感に満ちていたことを今でも覚えています。
piano ensembleは「闇」と「光」が常に共存していて、ファイナルとなった東京カテドラル聖マリア大聖堂での演奏は、まさに闇から光に向かって広がっていく瞬間を目の当たりにできたといえます。その一夜を過ごせたという点でも、教会が僕にとって忘れられない想い出にもなったというわけです。
終わりに
いつもと違う道から会社に向かった朝、地域の人が通うであろう小さな教会が目に止まり、教会にまつわる記憶を思い出しました。どちらもすでに何年も前の話ですが、記憶を紐解いてみると意外と詳細まで覚えているものです。
それだけ僕にとって忘れられない経験だったようです。
遠く離れたサンフランシスコの教会、東京カテドラル聖マリア大聖堂、気軽に足を運べるとは限らないかもしれませんが、どちらもまた必ず訪れたい場所です。